一般短文切抜Ⅲ、Ⅳより/訪欧帰国後。

半年間、ユネスコ研究員として、さらに最後の二か月は歌舞伎の文芸顧問としても仕事をし、帰国後も多くの媒体にこの訪欧のことを書きました。
朝日新聞に書いた記事には、「俊寛」や「忠臣蔵」が喜ばれ、「道成寺」や「車引」のようなストーリー性のない演目は異質なものとして受け止められたと書いています。このことは、その後登志夫が多数の海外公演に同行した後でも変わりませんでした。
「早稲田学報」には「ブレヒトばやり」というタイトルで、手帳に書いていたような自分が見てきた芝居のことを書いています。訪欧中に81本というたくさんの芝居を見たことも役立っています。ここからは切抜帳も4冊目になります。
こちらは翌年1月13日の日本経済新聞。「外国の国立劇場」というタイトルで書いています。訪欧諸国で見てきた劇場の状況と日本を比較して具体的な数字を挙げながら論じています。この年の秋には、繁俊もずいぶん尽力した日本はじめての国立劇場が誕生します。
「諸外国が演劇を単なる娯楽と見て、仕方がないから金を出してやるのだなどという態度ではなく、一般教育同様またはそれ以上に重要な情操教育、文化政策として積極的に推進している点は大いに学ばなければなるまい。」といい、諸外国と日本との演劇に対する予算が桁違いであることを指摘、これからできる国立劇場への意見を述べています。

本業ではなく、旅行記的なものも。翌年の「朝日ジャーナル」には、スコットランドの旅情を寄稿。撮影した写真も役に立ちました。

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演劇研究家・河竹登志夫(1924-2013)、登志夫の父・河竹繁俊(1889-1967)、曽祖父の河竹黙阿弥(1816-1893)     江戸から平成に続いた河竹家三人を紹介するサイトです。(http//www.kawatake.online) (※登志夫の著作権は、日本文藝家協会に全面委託しています。写真・画像等の無断転載はご遠慮願います。)