切抜帳21より⑤/歌舞伎公演ほかプログラム
1989年2月23日NHK古典芸能鑑賞会プロ。「春興鏡獅子」について。
「『鏡獅子』の美はまさに、エレガンスとダイナミズムという人間の両性を最高度に芸術化した、日本的理想美の境地といえよう」。面白くて的確だなと思います。最近はエレガンスが女性的でダイナミズムが男性的という考え方も古くなったので、今ならどう表現すべきでしょうか。『鏡獅子』について、なりたちなどを、九代目團十郎の芸談をまじえて丁寧に解説しています。
同プログラムに、出演者の富十郎さんの紹介文。これより三十年も前に「スター千一夜」で富十郎さんにインタビューしたとか。晩年まで、富十郎さんご夫婦とは時々お寿司屋さんにご一緒したり、親しくしていました。この世代の方々からは、黙阿弥物をやるときなど、質問の電話がきたりすることもあったようです。
歌舞伎座5月プログラム。「一語一会」という連載に4ページにわたって登場。黙阿弥家の五代目として取材を受けています。五代続くとそのあとのことが気になる人が多いようで、登志夫も毎度同じ問いをされていました。六代目になりたいという子供もいませんでしたし、名前だけのことで言うなら河竹はまだ続いています。
こちらは同月国立劇場の前進座公演『三人吉三』のプログラムに「生粋の江戸作者 河竹黙阿弥」。前進座からの発注が黙阿弥の生涯について書いて下さい、ということだったのでしょう。コンパクトに人となりがまとめられています。最後のほうに、河竹家の墓は花などを供えず、樒(しきみ)の葉で水をかけて供えると書いてありますが、先日墓参したとき、どなたかが20~30センチくらい、枝の先を折って供えてくれていました。神道の榊のように使ったのかもしれません。
6月国立劇場の歌舞伎鑑賞教室のプログラムに「お軽勘平の人間悲劇」。中村福助(今の梅玉さん)と中村松江(今の魁春さん)の勘平とお軽で『仮名手本忠臣蔵』の五・六段目。歌舞伎鑑賞教室は初心者の中学生や高校生向けの公演。登志夫は冒頭、「忠臣蔵を知らない人はいないでしょう」と書いていますが、最近は年末のテレビドラマでも忠臣蔵は企画されないことが多いし、知らない人が多いのかと思います。年々、説明しなくては理解されないことが増えていくのでしょう。
翌7月の同公演プログラムに「荒事と人間ドラマ」。こちらは富十郎さんの鳴神上人と時蔵さん(今の萬壽さん)の雲絶間姫で『鳴神』。
10月、香川県での舞踊公演のプログラムに。「造形美の究極」。太古から舞踊は常に存在し、洗練されてきた、という文章の冒頭、小学五年生の時の野外映画のことが書いてあります。登志夫の記憶力はすごい…。
0コメント