切抜帳16より⑥公演プログラム

1984年の切抜帳より、国立劇場3月公演プログラムに寄稿「黙阿弥と『弁天小僧』」。

「(1月に出演したNHKの番組で)冒頭に、黙阿弥は現在歌舞伎で一番上演回数が多いと述べた。実際、松竹の芸文室に調べてもらったら最近五年間の本数は、全歌舞伎上演作の十二%強、国立劇場だけに限ると、同芸能部の調査によれば十五パーセントにのぼる。上演作六本ないし八本に一本が黙阿弥、という頻度だ。もし著作権が生きていたら私は今ごろ大富豪で、どこかの国の大臣たちのように財産かくしに苦労していただろうが、幸か不幸か私の生れる直前に著作権は切れていた」。

と言うとおり、黙阿弥の著作権は歿後満三十年にあたる1923年、登志夫が生まれる前年に切れています。この頃の著作権は三十年、もし現在の七十年なら…。1963年まで著作権料が入ったことになります。そうしたら、その後の河竹家の人たちの人生は少し違っていたかもしれません。

ちなみに、繁俊の著作権は歿後五十年にあたる2017年に切れましたが、翌年の2018年には著作権は七十年に延長になりました。繁俊の著作権料はわずかではありましたが、著作権が切れたからと言って知らないうちに使われていると、出版後でもいいので、ちょっと教えてくれたらいいのにな、と思ってしまいます。

おなじく、国立劇場の「あぜくら」に、4月小劇場公演「幻の名作『腕の喜三郎』」。「あぜくら」は、国立劇場の会報のようなもので、確か劇場内にもフリーで置いてあり、翌月公演の紹介などが掲載されていました。4月公演の前に、補綴の役目だった登志夫が作品にまつわる話を書いています。

こちらが本公演プログラムへの寄稿。『腕の喜三郎』の誕生について、小團次と黙阿弥のこと、などなど。この役は小團次のあと、初代吉右衛門が評判をとり、それを二代目松緑が受け継ぎ、この小劇場公演で二代目吉右衛門に指導しているということです。

6月神戸文化ホールでの第九回歌舞伎鑑賞教室プログラムに、国立劇場発行の「歌舞伎・その美と歴史」からみどころ、聞きどころとして歌舞伎の特長について転載。

8月、松竹歌舞伎巡業プログラムに「かぶき讃」。

9月、文化庁移動芸術祭・邦舞公演プログラムに「踊りの魅力」。踊り、舞、振り、の違い、日本舞踊の楽しみを、六代目菊五郎の伝説をまじえてわかりやすく書いています。

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演劇研究家・河竹登志夫(1924-2013)、登志夫の父・河竹繁俊(1889-1967)、曽祖父の河竹黙阿弥(1816-1893)     江戸から平成に続いた河竹家三人を紹介するサイトです。(http//www.kawatake.online) (※登志夫の著作権は、日本文藝家協会に全面委託しています。写真・画像等の無断転載はご遠慮願います。)