加藤剛さん①
なんと、この日の「お献立」が残っていました。「1991年11月23日勤労感謝之好日」のこと、「集まる紳士淑女」は加藤剛夫妻、女優の藤村志保さん夫妻でした。登志夫はよく、このような蛙のイラスト入りのお献立表をささっと作ってコピーして記念にお渡ししていました。藤村志保さんは、共立女子大で教えていた頃の聴講生で、登志夫とは長いお付き合い、葬儀では弔辞を読んでくださいました。それにしても、なんとおいしそうなお献立。
良子の記憶では、この日はよいお天気で、お昼過ぎからいらして、登志夫の書斎から富士山を見たり、近所を散歩したり、離れに住んでいた登志夫の母(繁俊の妻)みつにもご挨拶してくださいました。そのみつが、剛さんのことを「15代目羽左衛門以来、あんな美しい人は見たことがありません」と言ったそうです。みつは明治時代の美しい羽左衛門を見ており(みつが当時から一番好きな役者で、助六、弁天小僧、切られ与三、直侍、俊徳丸、「桐一葉」の木村長門守、「先代萩」の勝元など、ほかの役者のは見たくないほどだったという)それと並ぶ美しさだと言うのですから、大讃辞です。
宴は昼の3時頃からなんとなく始まり、夜10時頃まで、話題も尽きませんでした。剛さんは、この「お献立」の9番目の「高野豆腐の煮しめ」を気に入って、何度かおかわりされました。これは、高野豆腐をちょっと油で揚げてからたっぷりの出汁で煮たもので、コクがあって美味しいのです。そして、7時間も食事をしたのは初めてだ、と驚いてお帰りになったということです。
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