黙阿弥とネズミ②
黙阿弥の長女糸の話の引用続きです。(繁俊著「河竹黙阿弥」より)
そうして飼われているのですから「お前たちも恩を忘れなければ、鼠は四相を悟るものともいうから、火災のある時には立去って報せよ」と言付けておきました。その故か、現に一度などはすっかり居なくなって、二日程御飯も何も喰べなくなりましたから、當るも八卦當らぬも八卦だと申して、荷物を片付けましたが、二日目に半焼になったので、皆して顔を見合せて驚いたこともございました。鼠を飼ったなどと申して、ペストでやかましい今日だったら大騒ぎでございましょう。
ペストなど、まだ鼠を媒介とする病気が知られていなかった頃のお話しです。
この絵は、1996年(平成8年)の歌舞伎座筋書の扉の絵を連載したときのものです。登志夫72歳。こういう漫画のような絵はあっという間に描いてしまいました。
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