河竹家と震災⑫焼け残ったもの④黙阿弥の妻・琴の櫛笄

こちらは、葛籠に入っていて残った黙阿弥の妻・琴の櫛と笄(こうがい)です。糸女が、母の遺愛の品としてかねてから葛籠に入れていざというときには持って逃げようとしていたものです。母の琴は、浅草並木町の茶道具商「大源」こと大和屋源兵衛の三女でした。登志夫の著書「黙阿弥」によると、

「大源は武家出入りで、ことに松平不昧公にかわいがられ、若殿に茶道指南もした通人だった。で、琴女は十三から二十まで、松平家で御殿奉公をしている。関東大震災のあと本所の家の焼跡から、焼けただれた短刀が見つかったが、琴女の懐剣だったにちがいない。」  

これは淡島明神御影歌とかかれた櫛 是真拝写 (箱の細工も素晴らしいです)

「皆人の心もつれをとけよとて引てをさむる神の」
と黒漆で書かれています。
上に是真拝写と書いてあります。

糸女の文字で、「母様嫁入の折大源様好みにて出来たる品の由我ら母よりゆずりうける」とあります。中身は……「貝尽くしの櫛」。

柴田是真作の、美しい櫛です。右下に、小さく、是真の名前が入っています。

こちらも琴女が大切にしていた櫛です。「母様の大事なくし」。

こちらも当時の有名な羊遊斎の作。右下に名前が入っています。下の櫛には、背の部分が美しく装飾されています。

こちらは「母様六十歳の節の笄」です。

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演劇研究家・河竹登志夫(1924-2013)、登志夫の父・河竹繁俊(1889-1967)、曽祖父の河竹黙阿弥(1816-1893)     江戸から平成に続いた河竹家三人を紹介するサイトです。(http//www.kawatake.online) (※登志夫の著作権は、日本文藝家協会に全面委託しています。写真・画像等の無断転載はご遠慮願います。)